昨年から1型だけ集中してやってみようと思い製作を行っていたジャケットの販売を開始しました。面白ディテールを考えて、これまで製作してきた物と同様にベーシックな外観を損なわないよう配置して行く事により形になっていった製品になります。
U.S.NAVY SUBMARINE UTILITY JACKETの外観デザインを元に腰ベルト、袖口カフスを加えデニム生地を使用する事によりワークジャケット型に近づけたオリジナルのデザインです。
U.S.NAVY SUBMARINE UTILITY JACKETはアメリカ海軍の潜水艦の作業員が着用していたそうですが、ミリタリーウェアとしては質素な外観、あまり戦いを連想させないデザインに引かれて元ネタとして製作を開始しました。 付加価値がある縫製方法やミシンの使用は行なわずに、今回製作したジャケットに必要な縫製方法で製作しています。 表生地には軽い毛羽立ち、赤みを持った11ozの日本製デニムをノンウオッシュで使用しています。裏付きデニムの上着には9oz~10ozのデニムが使用される事が多いですが、11ozを使用する事により通常よりも若干厚みを感じられるデニムジャケットとなっています。 裏生地に関して、表にディテールが多く生地の重さがあるので、極力軽くしたいという点からフリースを採用しています。保温性速乾性に優れ肌触りの柔らかいフリースを使用しました。またアンチピリングという加工が行われいる為、 毛玉を抑える効果があります。実際着用してみて見た目以上に暖かいです。 パーカーなどフード付きのインナーを着用した時に邪魔にならないように、フラット気味で若干開きのある衿の形状に設計しています。 ウオッシュ無しの濃紺デニムに同色の糸で縫製している状態では、デザインの主になる切り替えやディテールが解りづらいですが、将来的に洗いを重ね色落ちしていく中で、切り替えやディテールが姿を表せれるように同色の糸を採用しています。 背中部分はプリントをしたりワッペンを貼ったり後々カスタマイズし易いよう大きくスペースを開けています。勿論無地のまま着用される事もおすすめです。 通常の洗濯機で一回目の洗いで着丈、袖丈、身幅-1cm程、裾巾-2cm程縮みました。その縮みを縮率と呼び、計算に入れてパターンを設計していますが洗い 方干し方により縮み方は異なります。ノンウオッシュの状態から洗いをかけても大きくサイジングの変わる事のない縮率のデニムを使用しているので通常のサイズ感で選ばれるのが良いかもしれません。
着丈、袖丈、肩幅などアメリカンサイズとジャパンサイズの中間をとった大き過ぎず小さ過ぎず、太過ぎず細過ぎずのシルエット構築を基準に、袖はスプリットラグランと呼ばれる前はセットイン、後ろはラグラン袖で動き易さを損なわないよう設計しています。見た目のバランスを崩さないようにラグラン側にゆとりを増す事により運動量を確保しています。
平均的なアジア人の体型には、体にフィットするタイトなサイジングよりも全体的に少しゆとりを持たせ窮屈でないシルエットの方が似合うと僕は思っているので、肩を軽くドロップさせ袖丈を少し長めに設定しドロップした肩とのバランスを崩さない事により外見的にも腕が長く見えるよう設計しています。着ている服がしっくりこない方はうちの製品じゃなくても少しオーバーサイズかなと思うぐらいの服を試してみて欲しいです。 続きで袖周りについてですが、袖の太さと稼動域(運動量)は袖山と呼ばれる箇所の高さによって決まるのですが、袖山が高いと袖が細くなり稼動域が狭くなります。逆に袖山が低いと袖が太くなり稼動域が広くなるのですが、洋服を着たまま遊べ働ける運動量を確保しつつ、袖を太くし過ぎない袖山の位置決めがRCSでの袖設計のポイントになります。
特に機能素材ではないデニムなど昔ながらの生地を使用する場合は袖周りの設計から全体のシルエットが決まるので、ほぼ機能の全ての割合を占めてきます。といった独自の見解でシルエットのパターンメーキングを行っていますが、元々労働着であるアメリカンカジュアルがタイトであるのがおかしな話なので当たり前といえば当たり前なのですが、、アメリカンサイズでは大き過ぎるのでアジア人に向けて中間地点を目指して設計しているといった具合です。 またデニムジャケットは着丈が短い物が多く定番のアメカジスタイルになりがちですが、それ以外の着用方法も考えられるように、(Tシャツやパーカーなど着丈長めのインナーも合わせ易いよう)着丈を若干長く設計しています。 少し専門的なお話になってしまいましたが、これまでサイジングにあまり興味を持ってもらえなかったので詳しくは説明していなかったのですが一番こだわっているのはサイジングで、サイジングに関して一番提案して行きたい気持ちは変わらないので今後も徐々に説明していければと思います。
袖口中にリブを仕込む事により風の侵入を防ぎ防寒性を高めています。着用時にリブが見えないようカフス先よりも少し内側に縫い付け、またリブが飛び出してきたり、袖がめくれ上がって来ないようリブの根元を中とじと呼ばれる表裏を繋ぐ方法で固定しています。
リブ素材はアクリル60%ウール40%になります。ウールを混ぜる事により柔らかく肌触りの良いリブとなっています。
袖口タック釦にはARGENTデザインのネオバー釦使用です。
このネオバー釦はRUSTIC設立当初から使い続けています。オリジナルではないですが、手を加える所が無い素晴らしいデザインだと思います。
表の切り替え利用の大ポケットは角度が浅いのでポケットとしてよりもハンドウォーマーとして捉え、手を差し込んだ時の手の甲側にフリースを仕込む事により防寒性を高めています。
写真では解りづらいですが、ハンドウォーマーの内側奥に玉縁を二枚重ねる事によって一枚が返しになる、重ね玉縁と呼ばれるポケットを仕込む事により自転車 などに乗車した時に物落ちを防止する作りとなっています。
また手を入れる箇所と物をしまう箇所を分けることによりポケット内をスッキリさせる目的も含まれています。負荷のかかる部分には生地噛みリベットを打ち込み補強しています。
ブランドネームタグの縫われた裏背中の生地はデニムパンツに見られるウォッチポケット型になっており、使用方法としては限定出きませんが、例として力仕事のお客さんも居られるので現場でのお守りなどを収納出来ればと思い設計してあります。
動作を妨げづらく生地への負担が少ない脇部分にU字ロック、工具などを掛けれるループディテールを配置しています。 主に自転車のロック(カギ)を掛ける為に考えましたが、カラビナでもトンカチでも何でも作業時や移動中にサッと使えれば、また2つのループを同時に使用して工具を固定する事が可能です。重過ぎる工具類は道具箱に収納すれば良いので、それ以下の物しか差し込めないように入り口の巾を計算して製作しています。このディテールは使用していない時に特別な目立つディテールとして見えないよう出来るだけミニマルにデザインしています。
裏内ポケットは服自体が重くなり過ぎてしまう事を避ける為、カバンや道具箱を必要としない重量、大きさの小工具などが納められるよう計算しコンパクトにディテールを仕上げています。Dカンやジップ付きポケットを付属させる事によりカギや小銭がすぐに取り出せる仕様となっています。また各ポケットサイズを色んな道具の採寸をして統計を出して大きさを決めているので大体世にある小工具、小物はどこかに上手く収まると思います。イメージだけですが子供の頃に使っていた色んなボタンを押すと虫眼鏡や鉛筆削りなどが出てくる飛び出す筆箱を想像して製作しました。
表側のポケットに厚みがあるので、裏まで厚くなり過ぎないように最小限の生地枚数で設計してあります。また表地と裏地の間の見えない部分で裏脇下の部分とポケットの角裏をテープで吊る事により、物を入れた時に垂れ下がらないよう強化してあります。 裏脇には手ぶらでの外出時に邪魔になるペットボトル、スプレー缶などを収納出来るポケットを配置しています。フリース素材が伸び縮みする事により周21cm,高さ20cmを基準に+2cm程は収納可能です。 服が主役にならないようにディテールを表に出さない事、リアルに使える事。の2点を意識してデザインしています。日々の一般的な生活、趣味、現場仕事から得た必要な事だけを詰め込んでいるつもりです。
またディテールを使用していない時でも特別なジャンルや奇抜なモノとして捉えられる事無く気軽に着用できる普通の防寒着としてシンプルな外観にデザインしています。
もう一つ付け加えると道具などを身に付けておく事は、自分の為だけではなく誰かの為に持っておくという考え方も出来ると思います。年に何回か、はたまた一生無いかもしれませんが困った人を助ける手助けが出来るかもしれません。そう考えて準備しておくとたかだか服ですが素敵な物かもしれないなと思います。 裏のみ糸色を白にしているのは夜など暗い所で裏内ポケットを使用する時に生地同色だと、小分けにしたディテールが見えず使いづらいので、暗くても見え易く使い易くするために白糸を使用しています。
沢山のディテールがあるのでどこに収納したかな?と最初は戸惑う事もあるかもしれないです。僕は自分で作ったのにも関わらずそうでした。ですが使っていくなかで徐々に体が覚えていき自然と手が伸びるようになるものです。乗り物の運転を覚えるような感覚で少しづつ操作ができる喜びを服で体感しています。おバカさんみたいな話ですが何事も遊び心を忘れずにいたいので。。
千円札をマネークリップで挟んでいる箇所は二重のポケットになっており、奥のポケットは隠しポケットとして製作しています。写真では解りづらいので右裏内ポケットの縫製工程の一部を掲載しました。
パターン上で設計が完成しても例の無い事は縫製でしか出来上がりが見えて来ないのですが、今回は特に厚みがあるディテールが多く極力生地の重なりを減らさなければいけなかったので、縫いながら厚みを消せる箇所を見つけ修正して行きながら理想のパターンを形成していきます。
付属類ではファスナートップにYKKオールドアメリカンデザイン、明るさを抑えたくすんだゴールド色になります。
トップ以外は耐久性の高い通常使用される務歯、耐久性のあるポリエステルテープを使用しています。ポリエステルテープ色はデニムの色落ち後を想定して若干明るめの紺色となります。
腰ベルト部分にG.Iバックルを配置する事により裾部分のサイズ調整が可能です。バックルと連結した綿テープは表デニムと同じ染色堅牢度で染めたオリジナルです。表地と共に色落ちを楽しむ事が出来ます。補強箇所には生地噛みリベットを使用しています。
Model : 177cm : 67kg : Lサイズ着用
Model : 177cm : 67kg : Mサイズ着用
Model : 177cm : 67kg : Sサイズ着用
Model : 177cm : 67kg : Lサイズ着用
Model : 177cm : 67kg : Lサイズ着用
Model : 177cm : 67kg : Lサイズ着用
Model : 177cm : 67kg : Lサイズ着用
Model : 177cm : 67kg : Mサイズ着用
※全て同じモデルさん着用で平均体型より腕が長いです。
※またサンプルを着用しているので製品と若干の違いがあります。
いつも通りにサッと着用出来る事が自分には大切なので特にコーディネートしていない事から毎度同じ感じの着用写真になっていますが、デニムが色落ちしてきたらパンツをブラックにしてパーカーをバーガンディーにするなど、経年変化に沿って色の組み合わせを遊べるのがデニムの面白さかと思います。 根底はアメリカンカジュアルな服ですが、規定のカテゴリーで捉えない事、用途を限定しない事、上記のディテールをどう使うかによって新たなスタイルが固定概念に縛られず自由に出来る服であれば良いなと思っています。
よろしくお願いします。
Mathematics.